現在のエルメスと職人②

エルメスの商品は一般的に短い期間で流行することを考えていません。伝統的なデザインを踏襲し どの商品がロングセラーとなるようひとつひとつ丁寧な商品開発を行っています。特にエルメスのロゴが大きく目立つように貼り付けられた商品というものを見たことがある人はいないでしょう。高度な職人の技術と綿密な設計によってロゴが見えなくてもこの商品がエルメスであるとわかるように制作されています。 そのためエルメス内部ではブランドという言葉ではなく「シグニチャー」つまり署名という言葉を用いて職人は自分たちが行った素晴らしい仕事に対する成果として署名を書くことができると考えています。

エルメスがエルメスというブランドを高い水準で維持するためには、職人の高い技術力を維持する必要があります。そのため、エルメスはエルメス独自で独特な研修制度を持っています。これらは職人がエルメスに入ってすぐに受ける技術的な研修だけではありません。エルメスでは職人ひとりひとりに常に新しいアイデアや、考え方を持ってもらうために様々な研修を行っています。その中でも最も重要視されているのが異文化との交流を目的としたグローバル研修です。

例えばモンゴルの遊牧民であったり、アフリカの先住民であったりです。こうした日常生活では全く関わりのない人々と交流をすることがエルメスの職人には求められています。この研修によって自分の普段の生活とは全く異なる文化の中で生活している人たちが、普段の生活の中でどのような素材で作られたどのような道具を使っているのか、はたまた自分たちの作った道具が彼らの生活の中においてどのように役立つことができるのということを学ぼうとしています。かつて、エルメスの研修が日本で行われたこともあります。日本古来の人形職人とエルメスの職人が交流を行い、職人同士が自らの技術を披露しあって新しいアイデアを生み出すチャンスとなりました。