エルメスと職人①

ほとんどのエルメスの職人はエルメスで働くことを誇りに思っており、生きがいとしています。これはエルメスの企業風土が他社には真似出来ない程に大変良いものであることを表しているでしょう。容易に大量生産等によってコストを下げようとするのではなく、職人の手によって最高のであると自身を持って言えるものだけを販売し続けてきた歴史があるからだといえます。

しかし、エルメスの商品が職人による一つ一つ手作りであるからと言っても、それだけでエルメスは愛されるわけではありません。エルメスの商品には職人の手によって製造される愛情のこもった製品であること以外にもう一つの魅力があります。それはエルメスの製品のデザインです。エルメスの商品は現行の最新トレンドであっても、かつて流行したモデルであってもなぜか「この商品はエルメスのものだ!」をひとめでわかるデザインと雰囲気があります。これはシャネルのような卓越したロゴがあるわけでも、ビトンのモノグラムのロゴがあるわけでもありません。

エルメスの製品は自分自身の姿形でエルメスだと我々に訴えてくるのです。これはエルメスがそのデザインの中で統一感を持たせているからでしょう。では、その統一感というものは一体どういうものなのでしょうか?これはエルメスのポリシーが「シンプルさと実用性をデザインの象徴とする」からに他なりません。

元々が馬具製造工房であったエルメスは、極めて長い歴史の中で短期的なファッション業界全体の短期的なトレンドを追い認めることはありませんでした。流行に左右されない自身の確固たるデザインに僅かな調整を加えるのみで、最新のトレンドを維持するという神業的なことを延々とやってのけるのです。